２００１年８月１２日
米沢市内を流れている最上川は、酒田で日本海に注ぐ。学生時代に合唱で最上川舟歌を歌ったこともあって、一度酒田には入ってみたいと思っていた。山形から酒田まで山形自動車道があるが、途中の山越え区間の月山−湯殿山間が未開通。米沢からだと３時間以上かかるので、８月１２日が１日空いたものの、躊躇していた。ところが「ダメもと」で時刻表を見たところ、陸羽西線がうまく新幹線に接続しており、酒田を１１時に出ると東京に１５時に着ける。行きはと見ると、米沢を朝出ると、午前中に酒田に着ける。ばたばたと宿を手配し、急遽酒田経由で東京に帰ることになってしまった。あとは「はやり風邪など、引がねよに」（最上川舟歌より）すればいいだけだ。
８月１２日、朝から米沢は強い雨。電話で天気予報を聞いてみたが、置賜、村山、最上しか言わない。市外局番に続けて177を回し、庄内の天気予報を聞く。同じ山形県でも、庄内は別扱いだ。庄内の予報は曇り。これで安心、折り畳みの傘だけを鞄に入れて出発。
米沢発は８時３７分のつばさ111号。帰京ラッシュが始まっているが、米沢で下車する人も多く、その場で指定席が買える。同じつばさでもこのあたりは在来線なので「新幹線特急券」ではなく、「特急券」。おなじみの１３号車、425-7、7A。窓側の席が買えたものの、自由席やデッキは満員。東京を朝６時半に出る新幹線でこれだ。子供連れの人は大変そうだ。
小生山形から先は初乗りとなる。乗務員も代わり、ローカル列車の趣になってくる。奥羽本線は赤湯で一旦最上川から離れるが、さくらんぼ東根あたりでまた最上川に沿い始める。しかし距離があるため、車窓からは見えない。このあたりは皆水運で栄えた町のようだ。新庄はかつての山形駅のように、平面乗り換えの工の字形ホーム。奥羽本線、陸羽東線、陸羽西線のすべてに乗換となる。
奥羽線の接続快速「こまくさ」が待っていたが、なんとロングシートの701系！てっきり485系と思っていた。新庄には煉瓦造りの機関庫とターンテーブルがまだ残っており、庫の中にDE15が、かつてはC58がたむろしていたあたりにロータリー車DD14がいた。
新庄10時33分発、陸羽西線の酒田行き「最上川１号」は、酒田まで途中古口と余目の２駅停車で、４８分で結ぶ。この快速のおかげで、酒田までが便利になった。車両はキハ110の２両編成、ワンマンである。同じ小牛田のキハ110でも陸羽東線用と西線用とでは、塗装が違う。管理は大変だろう。先頭のキハ110-243の進行右側、一人がけシートに席を取る。この一人がけシート、リクライニングしない転換クロスだが、斜め窓向き45度でも固定できる。一種の展望車である。
陸羽西線は新庄では最上川の右岸を走っているが、やがて鉄橋を渡り、古口から最上川の左岸を併走し始める。古口は最上川下りの出発地でもあるが、列車からも川下りの風景が楽しめる。進行右側は川に面しており、こちら側のシートが窓を向くのもうなずける。最上川もこのあたりの川岸は自然のままで、森も自然林のようだ。森の緑が美しく、葉が横に広がったようになっているのも面白い。
陸羽西線の最上川下りは、狩川あたりまで続く。列車で最上川下りをするのも今回の旅行の目的の一つで、じっくり堪能する。川の流れは結構速い。森の趣を眺めるには、舟下りより列車からの方が良さそうだ。しかしトンネルが多い。
トンネルの断面が小さく、トンネルに飛び込むたびに風圧で窓ガラスに映っている映像がゆがむ。こういうときは窓の開かないキハ110は助かる。窓ガラスのない「風っこ」号では大変だろう。
酒田に着くと、まず駅のコインロッカーに荷物、上着、ネクタイを放り込む。シャツは半袖だから、、これに小さなバッグを持って、どうやら観光風の出で立ちになる。横川鉄道村の時はコインロッカーが無く、出張モードそのままだった。
まず駅から近い順にと、本間美術館へ行く。建物は文化年間に造られた本間家の別荘だが、明治期に皇太子（当時＝大正天皇）御滞在のために増設された二階がすばらしい。明治期の建物なので懐かしい造りだが、あちこちのものすごくお金がかかっている。ベランダの手すりはよく見ると10mの１本もの、北山杉だそうだ。檜の10mの１本ものもあるし、欄間の細工もすばらしい。窓ガラスは国産最古のものだそうだが、大きい。壁の、見る角度によって見えなくなる雲の模様も面白い。今ここまでのものを造れといっても、できないだろう。
酒田という町は、滅亡する平泉から逃れてきた藤原秀衡の妹、徳の前に付き従ってきた３６騎の家来が中心にな
って起こしたという伝説があるそうだが、防砂林の整備等発展の基を作ったのは、本間家３代目の本間光丘だそうだ。今年はその本間光丘翁没後２００年にあたり、本間光丘展が開かれていた。米沢は上杉鷹山公生誕２５０年祭で秋には鷹山フェスティバルが行われる。二人の歳が近いと思っていたら同時代を生きた人で、なんと本間光丘は上杉鷹山の改革アドバイザーになっていた。
そのまま歩いて本間家の本邸、旧鐙屋と回る。街には融雪設備が無く、同じ山形県といっても雪の量は多くないことが見て取れる。田圃の中を通る道路には開閉式の防雪柵があったので、「地吹雪」は多いのだろう。酒田の中心の商店街は「酒田大火」（３０年前か？）で全部焼けてしまっているが、本間美術館や本間家旧本邸のあるあたりが焼け残ったのはありがたい。
鐙屋は日本永代蔵に登場する豪商で、当時の接待の料理が展示してあったが、平目の刺身、蛸と里芋の煮付け、鯛の浜焼き（尾頭付き）等、現代でもかなりのご馳走である。屋根の葺き方が土＋杉板＋石となっているのは、強風対策だろう。
そのまま山居倉庫へ行く。１２棟の土蔵の並びも見事だが、日よけのためのケヤキの並木がすばらしい。おみやげ館もあるが、観光地のおみやげ物売場では必ず音楽がかかっている。あの耳障りな代物は何とかならないものか。山居おみやげ館では、何とも不釣り合いなハワイアンであった。
山居まで来たので、出羽大橋を歩いて渡る。最上川最下流の橋だが、さすがに長い。地図で見ると、1000mくらいある。このあたりの河岸が白鳥の渡来地になっているとは知らなかった。そのまま土門拳記念館まで歩いていく。思えばこれが間違いのもとだった。歩いて行くと、意外に遠い。新しくできた東北公益文化大学の前を通り、やっとの思いで着いた。
やっとの思いで着いた土門拳記念館は、閉館の１０分前。それでも入場させてくれたので、やや駆け足で見る。写真は古寺巡礼展。もう少しじっくり時間を取りたかった。庭もじっくり見たかった。
さすがにここから駅まで歩いて帰る気はなく、また１時間に１本のバスも出たあとで、タクシーを使う。1600円かかった。よくこれだけの距離を歩いてきたものだ。
米沢-東京館の切符を変更して酒田からにしたため、戻りも同じコースの陸羽西線経由である。最初からじっくり計画を立てていたら、新潟まわりを選んでいた。１０時５９分発の最上川４号まで時間があるので、観光自転車を借りてもう一回りする。昨日日本海を見ていなかったので、酒田港にある海洋センターの展望台に登る。最上川が日本海に入るところをじっくり眺められた。あとは駆け足、光丘神社のうっそうとした森を眺め、酒田駅着。そこで出張スタイルに変わり、最上川４号／つばさ１２８号のコースで東京着。ノンストップタイプのつばさだったので、酒田から東京までの所要時間は４時間８分だった。
２００１年１０月２７日
東北地方の山越えの鉄道路線はどれも紅葉の名勝地で、小生が現在住んでいる米沢を起点とする米坂線もその一つである。米坂線には新潟へ直行する快速「べにばな」号があり、一度乗りたいと思っていた。しかし機会が無く、今回は米沢への帰路を新潟−米坂線経由とすることになった。
１０月２７日東京駅１０時１２分発「あさひ」313号、２週間前に予約したのにすでに２階の禁煙席は満席で、仕方なく２階の喫煙席になった。５号車で車両はE159-1、サハである。上越線系はすいていると思ったが、２階席は別か。
これで新潟まで行く。在来線ではあるものの、上越新幹線の高崎以北は乗ったことが無く、これでやっと新幹線の本線区間（ガーラ湯沢や博多南線を除く）が完乗する。新清水トンネルも、思ったほどのスピードを出さずに通過。
新潟駅では８分で羽越線の「いなほ」５号に接続、慣れない駅ではちょっと焦る。２号車モハ484-1015。先頭はクロハである。在来線の急行／特急型は旧国鉄色に塗り替えるのが一種のブームであるが、この編成はいわゆる新潟色。しかし坂町で塗り替えたばかりの旧国鉄色の485系編成を目にした。
坂町で約３０分の待ち合わせ。坂町はかつては96の基地で、現在もターンテーブルと小さなラウンドハウスが残っている。坂町で一旦途中下車し、駅前のコンビニで昼食を仕入れる。１３時３８分発の米坂線各駅停車1128Dはキハ40＋キハ52の２両編成、珍しく２両とも両運である。以前米坂線に来ていたキハ40はロングシートであったが、今回のキハ40
507はオリジナルのセミクロスシートで、キハ52よりシートがゆったりしているのでこちらに乗る。
米坂線は坂町を出ると、荒川に沿って進む。この路線は旧越後街道に沿っており、上杉氏の居城米沢と旧領の越後とを結ぶ街道であったらしい。越後下関を過ぎたあたりで山がぐっと近くなる。「錦織なす」とはこのことだ。遠くに見える山肌は青く見えるはずだが、赤い。
越後金丸の次のトンネルが羽越国境であるが、あっさり越える。まだ上り勾配。米坂線のサミットは宇津峠で、小国町と飯豊町の境にある。やはり川に面した紅葉は風情がある。赤芝峡は一つの名所であるが、トンネルとトンネルとの間にわずかに見えるところが一番きれだ。
小国から山形県になる。小国は米坂線の沿線では一番大きな町のようだ。除雪車の転回に使用するのか、ターンテーブルも残っている。このあたりの沿線の両側は、どこを見ても美しい。しかし東西に走る列車では、北側に席を取った方が順光で景色がきれいに見える。
ここまで上り勾配とはいえ順調に走ってきたが、伊佐領を過ぎるといよいよ勾配も急になり、変速機のロックアップを解除して変速段に切り替えて登る。紅葉は高い位置に移り、窓から見上げる形になる。宇津トンネルを過ぎると下り勾配、これからは白川に沿って下る。それでも手ノ子まではまだ山中で、紅葉が楽しめる。
米坂線はここから萩生−今泉と大きく迂回して羽前小松へ向かう。手ノ子から羽前小松へ直行すると近いが、鉄道建設時に反対運動があったせいらしい。そのまま米沢盆地の中を走って米沢に向かう。これからは通い慣れた道。坂町から米沢まで、各駅停車で２時間１０分の旅程であった。
２００２年５月１２日
下北半島の中程、陸奥湾に面して青森県上北郡横浜町はある。駅で言えば、大湊線の陸奥横浜。核燃料で名高い六ヶ所村は、横浜町と背中合わせで太平洋に向いたところにある。この横浜町に、日本一の菜の花畑がある。時は５月中旬、春の遅い下北半島では、ちょうど菜の花が満開である。５月１２日の日曜日と、翌日は休暇。私用の休暇は年に１回取るか取らないかだから、たまには良いだろう。５月１２日は結婚記念日でもあるし（何の関係もない(^_^;）。
菜の花畑が鉄道の駅のすぐそばにあるわけもないので現地では車を使いたいが、車で下北半島に入るには高速道路は青森か八戸で降りて一般道路を走らなければならず、行きは良くても帰りに横浜町からその日の内に米沢まで戻るのはかなり厳しい。また宿泊地も、八戸、三沢、又は青森でないとビジネスホテルらしきものは見あたらない。結局「レールアンドレンタカー」を使い野辺地までは鉄道で、それから先をレンタカーにすることにした。八戸までの新幹線開通が今年の１２月だから、おそらく「はつかり」の乗り納めにもなるだろう。おまけにカミさんと二人分の乗車券が２割引、特急券が１割引。「レールアンドレンタカー」のメリットである。
５月１２日、前日土曜日も仕事だったので遅めの出発、１３時３９分発のつばさ１３０号（426-11）。板谷峠はいつ越えても景色がよいが、今は特に新緑が美しい。景色を眺めているうちに福島に着くが、山形新幹線からの盛岡方面は日中は接続が悪く、これから乗り継いでいく福島、仙台でそれぞれ３０分の待ち時間がある。仙台まではもっと接続を良くしておかないと、そのうち高速バスに食われるだろう。
福島-仙台は仙台止まりのMAXやまびこ１２７号（E459-214）、仙台-盛岡は「こまち」併結のやまびこ１７号（E225-427）。今朝方岩手県内で地震があり、震源地に近い一ノ関付近では70km/hくらいの徐行。そのせいか、上りが大幅に遅れていた。
東北新幹線も、仙台から先の方は景色が良い。特に仙台から北になると、護岸工事を行っていない川が増える。やはり川は自然のままの岸辺の方がきれいだ。また新緑は北に行くほど緑の色が薄く、黄緑に近くなる様だ。ちょうど徐行した区間の新緑は美しかった。
盛岡でちょっとぶらぶらするためにわざと１本遅らし、盛岡-八戸間はスーパーはつかり１９号。そうしたらなんとE750系にあたった！禁煙車はすでに満席で、喫煙車の４号車はモハE750-1、インバーターはE751の方でE750にはついていない。
E751系の窓は大窓だが、窓中央にE4系MAXのようにカーテン用のセンターピラーが付いている。シートもE4系と同じような感じで、固い。せっかく485系3000番台でいい感じのシートになったのだが、また悪くなってしまった。御堂-奥中山間では、遅い桜が咲いていた。
１２月に開業する新幹線は一戸には止まらず、二戸が工事の真っ最中。八戸も工事中で、雑然とした階段を上って八戸線へ。本八戸まで八戸線に乗ってみる。キハ48
536。それでも本八戸駅からホテルまではタクシーを使うことになった。八戸市内はバスの便が良いので、バスの方が良かった様だ。
５月１３日、本八戸まででもタクシーに乗るのだからとそのまま八戸駅に出て、八戸８時５２分始発の快速「うみねこ」に乗る。快速とは言いながら、ロングシートの701系２両（クモハ701-1040）。首都圏の私鉄が次々にクロスシート付き車を通勤路線に投入している時代に、ローカル線をロングシート化するJR東日本の神経がわからない。東北本線は北海道連絡のため貨物列車の密度は相変わらず高く、下田でEH500牽引のコンテナ列車を待避する。話には聞いていたが、快速列車に乗っていて貨物列車を待避するのは初めてだ。
野辺地はかつては南部縦貫鉄道の分岐駅だったが、南部縦貫鉄道も廃止されて久しく、草むしたレールと荒れ果てた駅舎だけが残っている。駅前の「駅レンタカー」へ。車種を指定しなかったら、シビックの4WDだった。置いてある車はすべて4WD。山形も含め、雪国の常識の様だ。ホンダ車の乗るのは久しぶりで、ホンダのオートマチックは初めてだが、走りはスムーズだ。アクセルを放すと勝手にオーバードライブに入れるトヨタ車より、よっぽど乗りやすい。
野辺地から横浜町までは一本道。途中大湊線の踏切があるだけで、左に陸奥湾を見ながら淡々と走る。なかなか良い景色の道だ。菜の花畑は「菜の花祭り」の標識があり、それに沿って右折する。やはり駅からかなり離れる。農道と言うより広いあぜ道と言った感じの道で、菜の花の中を通って特設駐車場へ。周りは全部菜の花。壮観！菜の花畑を切り取って作った「菜の花迷路」を通り抜け、展望台に行ってみる。スケールが大きすぎ、広さを実感しない。向こうは陸奥湾。その先は恐山。菜の花の香りがきつく、むせる様だ。観光ヘリコプターが飛んでいるが、空から見たらもっときれいだろう。帰りにカミさんは「菜の花石鹸」を買う。
陸奥横浜の駅にも行ってみる。ちょうど快速「しもきた」が到着、キハ100の単行。駅員がいるので、入場券を買う。陸奥横浜から横浜市内行きという乗車券を買うと面白いだろうが、帰りの切符は買ってある。町の家は玄関がほとんどが二重ドアで、北海道と同じ。雨樋がないところも同じだ。気候的には、北海道と同じなのだろう。
野辺地からは一気に帰る。はつかり２２号はお目当ての485系3000番台（モハ484-3059）だった。やはりこのハイバックシートが一番好きだ。三沢から八戸、三戸、二戸、一戸と、順々に止まる。盛岡からは今度は福島まで乗り換え無しのMAXやまびこ１０２号（E459-201）。福島まで各駅停車だが、これが一番早い。盛岡駅で駅弁を仕入れる。見慣れない駅弁ばかりなので目移りがするが、宮古駅の「海女弁当」にする。カニにイクラ、それにイカが丸ごと３杯乗って1100円は安い。食べて一眠りして福島へ。全行程を車にすると、これができない。福島からはおなじみのつばさ１４１号（425-7）。休みを取っていくだけの価値はあった。
２００２年８月１２日
夏休みに入っても何やかや会社に出る用事があったが、その用事も終わり、ともかく夏休みになった。今更「民族大移動」と同方向に行こうとしても切符はとれないのでまっすぐ帰るしかないが、ただ帰っても面白くない。そこで今年は常磐線で帰ることにした。
仙台発の常磐線経由「スーパーひたち」を使うため、米沢から奥羽、仙山線を回って一旦仙台に出る。乗車券を買う時に経由地を駅員さんが奥羽、仙山、東北、常磐と入力したがエラー。常磐の後にもう一回「東北」（日暮里-東京間は東北本線）と入力しなければいけなかった！
８月１２日昼前、米沢から各駅停車で山形に向かう。クモハ701-5509。面白くない！しかし米沢盆地は稲穂の緑がとてもきれいだ。東北の山の緑は、夏というのに明るい緑。九州だと黒に近い深緑になる。ワンマンカーはどうしても乗降に時間がかかり、山形到着は３分遅れ。新庄行きの各停が発車時間を遅らせて待っていた。山形からの快速仙山は719系４両。仙山線も仙台口は通勤路線で、旧急行型の455系がすっかり姿を消してしまった。先頭のクハ718-8に乗る。奥羽線の標準軌719系5000番台と違い、0番台の719系にはステップがある。
米沢を出た時は曇り、山形で小雨が降り出したが、北山形で対向列車を待っている間に雨がどんどん強くなる。そう言えば、庄内、最上には洪水警報が出ていた。山寺、面白山高原も雨の中。山寺に除雪車用か、小さなターンテーブルがあるのを見つけた。仙山線は雨が強いとすぐに不通になるが、宮城県側に入ってしまえばもう安心。作並まで雨が続くが、たいしたことはない。内親王殿下ご誕生で一躍有名になった愛子（あやし）には、折り返し運用の719系６両が待っていた。このあたりはもう仙台の住宅地である。
仙台でお昼を取るために一旦外に出る。気温は23℃。東北、北海道は日本海側より太平洋側の方が気温が低い。東京は今頃35℃だろう。駅に戻ったら、次の仙山線は雨のため40分遅れとのアナウンスがあった。仙台に早めに来ておいて、良かった！
仙台発の「スーパーひたち」は一日に５本しかなく、しかも１本は繁忙期のみの延長である。その延長された「スーパーひたち」46号に乗る。超繁忙期であるため、仙台発時に11両のフル編成。その１号車5A、車両はクハ650-5。651系のシートはプラスチック枠の軽量シートで、乗り心地があまり良くないと思っていたが、この車両のは立派なハイバックシート。腰の支えもなかなか良い。対向車両をよく見たら、増結の仙台側の４両編成のが軽量シートであった。増結といっても繁忙期以外は仙台まで通すのはほとんどこの４両だから、油断ができない。651系は基本編成（1〜7号車）がお勧めである。
がらがらの状態で仙台を発車。いわきまでは車内販売も来ない。長町の広大なヤード跡を横目に見て、岩沼から常磐線に入る。常磐線の各停は455系、こちらに転用されたか。常磐線のこの区間は、夜行でしか通ったことがない。単線、しかもロングレール化されておらず、昔ながらの「汽車の旅」の雰囲気である。
実はタイトルにも書いた「今は山中」の歌詞（題名は「汽車」）は、常磐線のいわきから広野までがモデルという話を聞き、確認することも今回の目的の一つでもある。「闇を通って広野原」は「広い野原」と「広野の原」をかけていると言うことだが。
常磐線には大きな峠はないが、小さな山越えは多くある。車窓も山の中と平野が、めまぐるしく変わる。そして次第に海岸線に近づいていく。そして広野、通過後トンネル。下り列車だと、まさに歌詞通りの世界である。ぐっと海岸によって久ノ浜、「今は浜」、まさかね。かつてはC62牽引の「ゆうづる」の好撮影地だったあたりをすぎる。レールもいつしかロングレールになり、複線になり、いわきに着くと「汽車の旅」も終わる。
いわきにはクリーム色の411系も顔を出しており、もう首都圏の雰囲気である。ここからは120km/hで飛ばす。そして常陸多賀からは130km/h運転。途中日立電鉄に移籍した旧営団銀座線の車両を目にする。両運転台化されているが、元は2000型だろうか。雰囲気はそのままである。水戸から上野までノンストップ。車内もほぼ満席。上野では撤去された旧18番線の隣り、17番線に無事到着。結構楽しめた。常磐線はいわき以北がお勧めである。
東北の桜と言えば、弘前である。一度は見てみたいと思い、開花時期を予想して予約を入れた。去年は桜の咲くのがやたら早く、角館は見事に空振りしてしまったが今年はどうやらうまくいきそうで、弘前に角館の再挑戦を組み合わせた。
切符を買った後にカミさんが「二人の北東北フリー切符」というのを見つけてきた。盛岡−田沢湖線以北が特急指定席乗り放題で、値段は弘前往復の約半額。ただし「男女ペア」という制限がある。これには該当するので、買った切符を全部キャンセルし、これに切り替えた。手数料を払ってもまだおつりが来
る。
２００３年４月２６日（土）
まず「こまち」11号で角館へ。先頭の16号車8C/D、E322-11。現在こまちは全車指定席になったが、かつては自由席だった車両。シートの背づりが幾分薄いと感じるのは、気のせいか。自動改札機を通ると、検札には来ない。車掌端末にはフリー切符の内容までは表示されないはずなので、男女ペアでなくてもばれないようだ。東京の桜は終わってしまったが、盛岡あたりまでくれば満開である。沿線の桜を楽しみながら角館へ。ただし天気は雨。まあ、雨女と一緒でこのくらいなら、良い方であろう。
角館の駅は大混雑。コインロッカーおろか、荷物預かり所も一杯。仕方なしに雨の中を荷物を持ったまま歩く。武家屋敷に着くと、ちょうど桜は良いタイミングだった。雨に煙るしだれ桜も、なかなか良い。角館の桜は、上品である。雨で足場が悪かったが川沿いの満開の桜並木を回り、駅へ。ここから秋田経由で大館へ向かう。
秋田までは「こまち」15号、14号車2A/B、E328-7。駅が一緒の秋田内陸縦貫鉄道は団体客のため１両増結していた。秋田で「かもしか」5号に乗り換える。3両編成の3号車9C/D、クモハ485-1005。かつて「つばさ」で活躍した485系1000番台の先頭車改造である。少し前に新潟に向かった「いなほ」14号はがら空きだったのに、結構混雑している。そういえば東京駅でも土曜日とあって各新幹線はほぼ満席だったのに、新潟行きの「とき」だけ空いていた。
今日の夕食は「かもしか」車内で「鰰すめし」。テーブルは肘掛けの横で、ぐるっと回して前に出す。航空機タイプの前の座
席の背中に付いているものと比べると、何とも狭い。奥羽線の日本海縦貫側は貨物列車の密度が結構高い。頻繁にEF81牽引のコンテナ列車に出会う。秋田から1時間20分で「ハチ公」の待つ大館に到着、ホームに「ハチ公神社」まである。本日は大館泊。
４月２７日（日）
大館にきたのは、弘前の宿が満員で泊まれなかったこともあるが、ハチ公の銅像を見たかったこともある。ハチ公の銅像は渋谷駅前が有名だが、あの像は晩年の姿で病気のために耳も垂れている。ところが大館のは元気な頃の姿で、りりしい。本来の秋田犬の姿と言えば、こちらだ。ハチ公像の後ろに、秋田犬家族の像もある。
大館駅前にある地図を見ると、少し離れたところに小坂鉄道の駅がある。時間があるので行ってみたら、駅のあったあたりは更地になっており踏切だけがある。線路はそのまま大館駅のヤードにつながっているので、列車は走っているようだ。東京に帰って地図を見てみたら「貨物線」となっていたので、どうやら旅客の営業は止めたようだ。大館駅横の貨物ホームでは、日曜日というのにコンテナの荷下ろし中。最近では珍しい。駅構内も広く、そして線路が生きている。こういう風景を見るとうれしくなる。
大館から弘前までは寝台特急「あけぼの」の立席乗車。フリー切符はありがたい。やがてEF81 135に引かれたブルートレインが入線。座席利用とはいえ、寝台車に乗るのは二十数年ぶりだ。２号車のオハネ25 147の一番端17番が空いていたのでそこに座る。いわゆる半分のボックスである。時間帯が良いのか「あけぼの」は大館から乗る人が多くしかも立ち席利用は解放寝台に限られているので、本当に「立席」の人も多い。発車。すごい衝動。緩衝器がへたってきたのか、それとも24系は元々こんなものだったのか、どちらにしろ密着連結器の電車に慣れた身にはすごい衝撃に感じる。これから矢立越え、かつては大館や弘前のD51が２台で後押しをしていた区間だ。木々の間を抜けていくので、東北本線の御堂−奥中山間のような雄大さはない。峠越えも現在は電化されているが、空転しやすいEF81ばかりなので気の毒に感じる。大鰐温泉では弘南鉄道の旧東急6000系と7000系を目にする。
弘前到着。昨日とはうってかわって良い天気、しかも日曜とあってすごい人手だ。駅構内には北海道のキハ182系5000番台「ノースレインボー」が止まっている。函館発弘前行きの臨時特急「さくらエクスプレス」の車両だ。青函トンネルは電車専用ではない。
この人出で弘前もコインロッカー、荷物預かり所共一杯。また荷物を持って歩くことになる。観光は体力なり(^_^;。
弘前の桜の名所は弘前公園（弘前城址）だが、入り口まではバスが頻繁にでている。北門から入って公園を突っ切ろうと思いバスに乗ったところ、すごい渋滞。まるで動かない。バスの運転手さんによると、付近に駐車場が少ないのに他県ナンバーが集まってこうなるのだそうだ。仕方なしに途中で降りて歩く。お堀のそばを歩くが、ともかく桜、桜、桜。ちょうど満開、実に良いタイミングだ。北門の近くに桜越しに岩木山が見えるところがある。岩木山は午前中しか見えないことが多いとのこと、これも良いタイミングで来た。
武家屋敷跡を眺めたあと公園内（城内）へ、すごい桜だ。弘前の桜はすごいすごいと言われており多少反発も感じていたが、ここまですごいとは思わなかった。完全に脱帽である。米沢（松ヶ崎公園）は完全に負けている。桜はほとんどがソメイヨシノだが、少しずつほかの桜もありそれがアクセントになっている。天守閣に上るのは人出が多いので断念。
桜をたっぷり堪能した後、公園を出て弘前大学医学部の横を抜け最勝院へ。ここには五重塔がある。五重塔と桜の取り合わせも、また良い。修理が終わった後だろうか、塔の色が鮮やかだ。
今日中に東京に戻るため、そうゆっくりもできない。弘前公園から場所をはずしたため渋滞もなく、バスで弘前駅へ引き返す。駅ビルで昼食と買い物。青森が「ねぶた」、弘前が「ねぷた」というのは、このとき気づく。弘前からは14時29分発の「つがる」22号、このまま「はやて」に乗り継いで、東京には19時8分に着く。所用4時間40分、やはり早い。
「つがる」はE751系で、5号車8A/B、モハE751-2。最近の在来線用の新車はシートがよく、なかなか快適だ。一方新幹線の方はシートはよいのだが、セクション切り替え時か定期的に前後の衝動がある。切り替えの無電圧時間は0.3秒というのだが、結構不快な衝動だ。在来線には無い。
「つがる」22号は弘前-八戸間で停車駅は青森だけ。野辺地も三沢もすっ飛ばす。八戸には「白鳥」22号の6分後に着き、そのあおりか八戸での乗り換え時間は7分しかなく結構焦る。
八戸駅は見違えるほどきれいになっている。しかしゆっくり眺める時間はない。「はやて」22号は10号車8A/B、もう３人がけしか空いていなかった。E224-128、残念ながら１次車。E2系は２次車から車端下ダンパが増設され揺れが改善されたが、１次車はそのままである。それでもフル規格新幹線、在来線の田沢湖線とは訳が違う。気になるのはセクション切り替えの衝動だけで横揺れは少なく、かつての景勝地もトンネルで抜け、盛岡へ。盛岡も桜が満開だ。これから先はおなじみの区間である。
弘前へは一度行ってみたかったが東京からは不便で、なかなか行けなかった。新幹線が八戸へ延長し、特急「つがる」の運行開始により気軽に行けるようになった。やはり新幹線に威力は大きい。
大井川鉄道は千頭まではSL急行が走ることで有名だが、その先の井川線には90パーミルの日本最急勾配があり、そこをこれまた日本でただ一つのアプト式で登っている。夏休みになったので、井川線に長浜の鉄道文化館を組み合わせて出かけることにした。
２００３年８月１１日
新横浜発6時54分のこだま441号。朝が早くても遊びとなるとちゃんと起きる。混雑する時期なので指定席を確保しており、11号車325-708に乗り込む。多客期で不定期列車もフルに運転しているのか、駅間を全速で走って次の待避駅で追い抜かれることの繰り返し。まるで京王線か小田急の各駅停車だ。静岡で東海道線の各停に乗り換える。クハ111-2202、同じ111系でも東京近郊の車と雰囲気が違う。しかし最近は各駅停車でもよく飛ばす。
金谷で大井川鉄道に乗り換える。乗車券は長島ダムまで買い、電車でも有料急行なので\150なりの急行券も買う。両方とも硬券！旧近鉄の16102に乗り込み、折戸が閉まって一路千頭へ。１時間弱で千頭に着き、別改札になっている井川線ホームへ。井川線はナローゲージだと思っていたが、車体が小さいだけで軌間は普通の1067mmである。ディーゼル機関車が千頭側（山下側）に付いていて、井川行きの場合は先頭のクハから機関車を遠隔制御する。本物の「プッシュプル」だ。不定期列車なので客車は３両、DD204の隣のスロフ305に乗り込む。当然冷房などはなく、窓は開けっ放し、ドアも手動。トロッコ列車の雰囲気である。
車掌の吹く発車合図の笛に対しクハが警笛で応答して発車、急カーブの連続である。トンネルに入るとエンジン音がやかましいが、後ろから押してくるので排気臭さはない。各駅とも発車合図は車掌の笛、応答は警笛。総括制御のケーブルは通っているが、ブザー回路は付いていないようだ。列車は次第に高度を上げ、杉木立の間を抜けるときの風が心地よい。やはり夏向きの列車だ。
廃線となった旧線と別れ、アプトいちしろ着。３両のED90がいて、この列車は客車３両なので単機のED903が後ろに付く。もうここからラックレール区
間だ。DLは解放せず、アイドル運転させたまま押し上げてしまう。このアプト区間だけ車両限界が大きく、ED90は「普通の」大きさがある。なお連結解放作業とも特別の係員はおらず、ED90の運転士と車掌で行ってしまう。さすが私鉄だ。
ブレーキ導通確認は警笛での合図、大井川鉄道全体に「懐かしい鉄道」の雰囲気を残している。碓氷峠と異なり先頭クハからの総括制御で出発、ED90はぐいぐい押し上げる。さすが90パーミル、車体の傾斜がはっきりわかる。アプト区間を走りきり、勾配がレベルになって長島ダム着。ED90はここで解放、列車はまたDLに押されて井川へと向かう。
小生はここで下車、次の列車で折り返す。時間があったのでダムを見に行くが、台風の後なので水が汚い。ダム湖上駅をキャンセルしたのは正解だった。
長島ダム駅は無人駅で、ED90を解放するのに運転要員も誰もいない。ED90がぽつねんと上り（降り）列車を待っている。帰りの列車が着くまで、長島ダムを見に行く。いつもなら清流なのだろうが、台風の後なので泥水である。
帰りは最後尾のクハ603、先頭にED90を連結して発車。ラックエントランスはもっと速度を落とすかと思っていたが、普通に乗り入れた。思ったより速度は速い。なお井川線の最長列車は客車８両＋DL２両とのことで、この長さになるとED90は重連で押し上げる。千頭に着いた後、SL急行接続の列車がその最長編成で井川に向け出発していった。
千頭に着き駅前でそばを食べて戻ってきたら、SL急行が入線していた。牽引機はなんと復活したばかりのC11190だった！早速入場券を買ってホームにはいる。運転室を覗くと、復活会員の名簿が真鍮のプレートにして貼り付けてあった。一応自分の名前を確認する。ちょうど助手席の上である。
千頭駅の構内では夏休みということもあり、C10を使用してSL体験教室が開かれていた。制服制帽貸与で、「機関士見習」の腕章を着ける凝りよう。ほんの10mの往復だが、本物のSLを機関士席で動かせる。かなり早めに申し込まないと満員になりそうだが、来年は申し込んでみようか。
再度電車急行で金谷へ戻る。今度は旧京阪の3008、かつては鴨川沿いを走っていた特急車である。金谷から掛川まではモハ114-1010。御殿場線など山線を持っているせいか、東海道線のJR東海の区間は113系と115系が入り交じっている。ただしJR東海の区間はトイレのない編成が多いので、要注意である。
掛川から米原までのこだまも指定席を確保し、井川まで往復する時間で予定を組んでいたので、掛川で時間が余る。良い機会なので、掛川城を見に行く。浜松を隣に控えた支城なのに、よく幕末まで残ったものだ。なお天守閣は平成６年の復元であるが（なんと、木造復元）、城郭御殿は昔のまま残っている。
掛川から米原までのこだま425号は、100系だった！126-239で残り少ない（おそらく小生にとっては最後の）100系の乗り心地を味わう。東海道新幹線は東北/上越新幹線よりシートピッチが約10cm広く、窓側の席への出入りが楽だ。ただセクション通過時のショック（前後動）は、パンタグラフを減らした後の100系が一番強い。
北陸本線の交直変換点はかつては坂田−田村間であったが長浜−虎姫間に移動し、そのため長浜まで新快速が乗り入れている。そのため米原から長浜までは新快速、サハ223-2044。結構乗客は多い。なお長浜−敦賀間は2006年秋に直流化との掲示があった。北陸本線全線直流化も、時間の問題のようだ。
８月１２日
今朝は長浜。昨夜からの雨も何とか上がり、傘を差さなくて済みそうだ。
今日の目当ては長浜鉄道スクエアだが、開館時間まで間があるので、長浜の町を歩く。ところが、驚いた。「黒壁スクエア」と名前が付いていたのでてっきり人工的な観光施設だと思っていたら、旧北国街道の町並みが江戸末期から明治初めの姿で残っている。高山のように通り全部ではないが、身を隠せるように鋸刃型になった家の並びなど、他ではなかなか見られない。「うだつが上がらない」という表現を使うが、「うだつ」は一種の防火壁、この「うだつ」を上げた家も残っている。
９時開館の長浜鉄道スクエアに向かう。旧長浜駅に北陸線電化記念館と長浜鉄道文化館が併設されたもの、展示団体が
それぞれ異なっているようだ。長浜はかつて東海道線の駅で連絡船との乗換駅だったため、立派な作りをしている。小生の目当てはED70、ぴかぴかに整備されている。ED70の車体の特徴は内開きの貫通扉で、ED71やED60以降はすべて外開きとなってELでは多に例を見ないだけに、貫通扉が溶接されてしまっているのが惜しい。台車の砂箱が斜めに付いているのは、初めて気が付いた。
交流電気機関車の解説は結構細かいところまでつっこんであり、結構おもしろい。1957年（昭和32年）に北陸線が交流で電化された時は交流電化は経済的な電化方法であったのだが、技術の進化により直流電化の費用が安くなり、また当時は予想できなかった電車化の進展のため、交流電化はメリットが少なくなってしまった。大都市圏に近いほど直流の方がメリットがあるので、敦賀まで直流化されるのも時代の流れだし、北陸線が全線直流化されるのも時間の問題だろう。
長浜といえば、長浜城。石田三成が秀吉に見いだされたところでもあり、秀吉ゆかりの町でもある。長浜城は昭和58年に再建されたもので、中は博物館になっている。長浜城の歴史の中に、天正13年から18年までは山内一豊が城主で、移封後は荒廃したとある。あれ、どこかで聞いた名前、と思って昨日の掛川城のパンフレットを見てみると、天正18年から山内一豊が城
主とある。要は山内一豊は天正18年に長浜から掛川に「転勤」になったのだ。いつの時代も大変でござるのう、御同役。
時間があったのでまた北国街道側に戻り、安藤家を見学する。明治末期の建物だが、なかなか風情がある。北大路魯山人が逗留したこともあり、魯山人ゆかりの品が多い。お昼は黒壁スクエア内の、石臼引き手討ちそばの店にはいる。セットを頼んだら生わさびとおろし金が出てきて、わさびをすって豆腐にのっけて食べろという。これがうまい！そばにもわさびをのっけて食べたが、そばもうまい！久々にうまいそばを食べた。
長浜から457系３連の各停で敦賀に向かう。クハ455-65、急行型電車に乗るのも久しぶりだ。クハに乗っていたせいか、交直セクションは気づかずに通り過ぎた。途中見た余呉湖は、なかなか魅力的だ。湖西線とのジャンクションは、ダイナミックだ。
敦賀に来たのは、初めてである。かつての敦賀第一機関区と敦賀第二機関区は名前こそ変われ、健在。敦賀から別れる小浜線は直流で電化されたので、架線はおろか線路も車止めで分断されている。北陸線が敦賀まで直流化されると、架線も接続されこの車止めもは
ずされるのだろう。
今回の目的はサンダーバードに乗ることだが、せっかく来たので町を見て歩く。名所は気比神宮、そこまで歩く。すると道路の両側約10mおきくらいに「銀河鉄道999」の各場面のモニュメントが置いてある。松本零士と敦賀、何か関係があるのだろうか。
気比神宮の大鳥居が有名であることは、来て初めて知った。確かに木造でこの大きさは、珍しいだろう。気比神宮の歴史は古く、敦賀が古くから京の日本海側の玄関であったことが知れる。
芭蕉が敦賀は月の名所と讃えたそうで、気比神宮の中にも、芭蕉翁の銅像があった。
敦賀の歴史に興味が出てきたので、敦賀市立博物館まで足を伸ばす。収蔵品の整理がされていないのが残念だが、歴史はおもしろい。現在我々は東京を中心に考えがちだが、明治の始めはまだ京都が中心だったのだ。そうしてみると、南に神戸、北に敦賀の港がまず開かれたのがわかる。ただ敦賀の繁栄が知れるにつけ、戦後の引き揚げ船の港がなぜ舞鶴になったのかが疑問になってくる。今度は舞鶴に行かねばなるまい。
少し早めに敦賀駅のホームに上がり、サンダーバード92号を待つ。すると一つ前の雷鳥30号がやってきた。車両は485系の国鉄塗装。敦賀に来る時に新疋田あたりで鉄道ファンがいたわけがわかった。敦賀に停車後第二パンタを一斉に上昇、現在特急車で２個パン運転を行っているのはJR西日本だけなので、この光景が見られるのも残りわずかだろう。発車した後に気が付いたが、最後尾は国鉄塗装のボンネット車！写真を取り損なった！
サンダーバード92号は683系、乗った３号車はモハ683-1001、これは良い！発車する、さすがに早い。疋田のループ線を楽しみにしていたのだが、トンネル内がほとんどよくわからなかった。近江塩津のジャンクションは立体交差と平面クロッシングの組み合わせ、特急なので立体交差で湖西線にはいる。湖西線はそこから高架で一気に下るが、なんと車窓に琵琶湖の北端が見えた。湖北は家の数も少なく、良い雰囲気である。今回は琵琶湖一週が目的だったが、進行左側の席が取れたおかげで思わぬ収穫があった。
琵琶湖線と呼ばれている東海道線の大津−米原間も北陸線も、線路と琵琶湖との間には建物が建ち並び、琵琶湖を目にすることはほとんど無い。ところが湖西線は琵琶湖のすぐそばを走っているので、琵琶湖がじっくり眺められる。湖西は開発が遅れているのか、草むした空き地をよく目にする。湖畔の企業保有の保養所が売りに出ているのは、時代のせいか。敦賀−京都間59分ノンストップ、乗り心地もよく、サンダーバードを堪能した。京都に近づくにつれスピードを落としたが、これは臨時列車の宿命だろう。
京都からはのぞみ22号、500系である。E席なのでこれも琵琶湖側、米原までで琵琶湖一周が完成した。あとは新横浜まで久しぶりの500系を楽しんだ。やはり東海道新幹線の方が東北新幹線より車内にゆとりがある。
例年この季節は東北へ行っていたのだが、とうとう今年は行く機会がなかった。それでは、と言うわけではないが、今年は奈良、それも奈良市より南にした。
２００３年１１月２２日
新横浜発12:20、のぞみ221号。かなり遅い出発だが、一週間前でもこれしかとれなかったのだ。さすがは３連休、もっと前に切符を買っておくべきだった。この列車は悪名高き300系(;_;)、しかもプラグドア装備の初期車（325-16）。よく揺れる。
東北／上越新幹線は自動改札を使用すると検札に来ないが、こののぞみでは検札に来た。確か東海道新幹線も検札廃止と聞いていたが、のぞみの自由席設置で復活したのだろうか。
今日は日のあるうちに奈良公園を見たいので、京都から奈良まで特急を使う。京都着が14:23、近鉄特急の京都発が14:35、その場で切符を買ってもこの接続時間で乗れるところが近鉄の魅力でもある。乗った車両は何とビスタの２階（30107）！短時間であるが展望を楽しむ。近鉄特急は先年車内販売が廃止されてしまったが、今回５年ぶりくらいに乗ったら車内検札も廃止されていた。
久しぶりの奈良である。まず興福寺を目指して歩く。興福寺、奈良公園、東大寺、春日大社と全部つながっているので、どう歩いていっても名所がある。奈良公園の銀杏を見るつもりで来たのだが、銀杏よりも紅葉の方が目に付く。それもまた良し。
天気予報で今日から冷えると言っていたが、本当に冷える。冬の格好をしてきて良かった。春日大社から東大寺の方に向かう。今日は紅葉見物なので、明るいうちはともかく外を歩く。なかなかきれいである。
とうとう銀杏には行き着かなかった。東京に帰って調べてみたら、駅から見て東大寺のもっと左の方であった。
暗くなってきたので興福寺の国宝館に寄り、阿修羅様と対面。天燈鬼竜燈鬼が立派なケースに入っていたが、５年前はこんなケースはなかったような気がする。駅前の喫茶店で休憩。よく見るとこの店、いすやテーブルクロスがウィリアム・モリスのデザインで統一されている。ケーキの味も良かった。
今夜の宿泊場所は大阪の難波、意外と穴場かも知れない。奈良から難波までは近鉄の快速急行、休日でクロスシートになっているL/Cカーに座れた。
１１月２３日
今日も天気が良い。「雨女」と一緒に来ているのに、これはどういう訳だ(^_^;。
昨日難波の駅の出口でさんざん迷ったので、今日は出来るだけまっすぐに近いコースを取る。乗り場に行く方は「近鉄」の表示があるのでわかりやすい。以前は近鉄は「するっとKANSAI」が使えないと思っていたが、使えるようになっていた。ただし使える自動券売機は限られている。
奈良線は難波まで乗り入れているが、大阪線の特急以外はメインターミナルである上本町止まり、上本町まで奈良線で移動する。上本町は２階構造で、大阪線は地上ホーム、結構距離がある。さて大阪線ホームに出てみたが、列車種別の優先度が全くわからない。先発の「準急」に乗ったところ、途中で「区間快速」に追い越されることがわかった。また一駅先の鶴橋で降りる。鶴橋は複々線ホームで、奈良線からの乗り換えも楽である。
やってきた区間快速はL/Cカーだが、これが大混雑。休日は観光列車に一変するようだ。今日はまず談山神社に行くため桜井まで行くが、乗客は桜井まではほとんど減らなかった。（あとでわかったが、長谷寺でかなりすいた。）
大阪発の近鉄は奈良線も大阪線も山に向かって走る。そのため勾配はかなりきつい。25パーミルくらいはざらにあるようで、本当の山登りになると33パーミルがあるはずだ。そこをハイパワーのモーターにものを言わせて強引に駆け上がる。標準軌の関西私鉄ならではだ。
桜井から談山神社まではバスだが、今日は３連休とあって臨時バスが出ていた。早速飛び乗る。これもまた満員。観光地はコインロッカーがあってもシーズンは全部ふさがっており、今日もまた荷物を持って移動する。
「談」の付く地名はたいてい悪巧みがされた土地だが、ここ談山（「かたらいやま」と呼ばれるようだ）は後に「大化の改新」と言われることになる暗殺が企てられたところ、談合坂より900年ほど前の話だ。さすが大和の国。
談山神社はその大化の改新の主人公藤原鎌足公を祭った神社だが、我が国唯一の木造十三重の塔がある。紅葉の中でなかなかきれいだがひとつひとつの層が薄いため、パンケーキを重ねたようにも見える。
それにしても天気が良い。天気が良すぎて写真にすると紅葉が飛ぶかとも思ったが、意外ときれいに撮れた。この状態で観光案内では「五分」である。
バスで桜井に戻る。帰りは座れた。荷物を持っているので、ほっとする。急行で室生口大野へ、急行もこのあたりは比較的小さな駅にでも止まってくれる。
室生口大野に着いたが、駅前はそれこそ何もない。桜井が大きい市だったため油断していたがここは室生村、昼飯が先にのびてしまった(^_^;。余談だが奈良市は奈良県の北の端にあり、近鉄大阪線より南は村だけになる。そのあたりで紅葉狩りの人がツキノワグマにおそわれたというニュースを、帰りの新幹線の中で見た。
ここから室生寺までまたバス。臨時バスが出ているがそれでも20分おきで、日頃は一時間に１本くらいだろう。ここまで奈良県で、今日は奈良交通の稼ぎ時である。バスは大野寺の前を通って室生寺へ、室生口大野の駅名の半分の由来はこの大野寺だ。
女人高野と言われる室生寺の境内は広い。しかし今日は東京まで帰らなければならないので、五重塔までにする。室生寺は森の中に五重塔が建っており、数年前に台風の倒木で壊れてニュースになった。その五重塔も修理が完了して美しい姿を見せている。小振りの塔で周りの景色によくあっている。
金堂にはご本尊の国宝釈迦如来立像があり参拝するが、小生にはその前にある運慶作と伝えられている十二新将像の方が興味がある。おみやげに十二神将の絵はがきを買う。紅葉は談山神社より標高が高いせいか、こちらの方が進んでいる。ちょうど見頃。紅葉もきれいで塔もきれい、今日は収穫があった。
まだ午後１時を回ったばかりだが、帰りの新幹線の切符も取っていないし何しろここは山奥、帰りの支度にかかる。バスで室生口大野に戻るがこんな早い時間に帰り始める人はいないようで、楽に座れる。ともかく特急の停車駅まで移動しないと話にならないので、あわただしく宇治山田行きの急行に飛び乗り名張まで移動する。名張からは三重県である。
このあたりは赤目、名張と白土三平作のマンガに出てくる地名が続く。もう少し行けば伊賀、このあたりは忍者の里だ。
名張で名古屋までの特急券を買う。すぐに直通があったがお昼を食べるため１本あとの中川乗り換えにする。それでも所要時間は１時間半。さすがに早い。中川乗り換えの特急券は１枚に両方の座席番号が印刷されており、磁気券ではない普通の紙である。改札機を通すわけではないので、この方がコストは安い。関西流の合理化だろう。
名張から中川までは鳥羽行き、22116とかなり新しい車だ。中川では両側の扉が開き、ホームの向かい側に２分の接続で名古屋行きの特急が来る。この、両側にホームがあって両方のドアが開くやり方は西大寺でも行っているが、関東では見たことがない。関東は「同一ホームでの乗り換え」にあまりこだわっていないようだ。ちなみに携帯電話の「乗換案内」では、この２分の接続は乗り換え不可と見なされて出てこない。
中川からの名古屋行き特急はほぼ満員。停車駅の度にあちこちに席を移動する人が出る。それでも車内検札に来ない。車内販売の廃止のあと車内検札も廃止してしまったのだろう。車掌には指定券の発行情報がリアルタイムで届いているのかも知れない。
名古屋で１時間半後ののぞみが取れた。それぞれＢ席の前後だが、この時期で１時間半後なら良い方だろう。名古屋駅は「東海タワー」とかになって新しく大きくなったが、旧駅ビルの方でケーキを食べながらのんびりする。古い駅ビルのせいか安い！
のぞみ60号は700系、さすがに300系に比べると乗り心地がよい。700系もトンネルに入った時の蛇行動さえなければ、言うことはないのだが。と言いながら夢見心地、気が付いたら熱海をすぎていた。
２００４年６月１２日
国の無形民俗文化財「チャグチャグ馬コ」は、2001年から開催が6月の第二土曜日になり、サラリーマンも行きやすくなった。米沢にいた頃カミさんが見に行き「一見の価値有り」と言ったので、今年出かけることにした。
馬が滝沢村を出発するのは朝9時半だが、盛岡駅前を通過するのは12時過ぎ、さほど早くない新幹線で間に合う。お昼前に盛岡に着けるよう、東京9時8分発のやまびこ81号にした。10号車で車両はE224-102、JR東はこまちと関係なくE2系＋E3系を増備しているので、やまびこにもE2系が当たる確率が高くなった。
天気予報では午前中は雨だったが、幸い雨は落ちずに東京駅に着ける。こういう曇り空の時は沿線の緑が美しいのだが、E席に座ったおじさん（小生はD席）が席に着くなりほとんど反射的にカーテンを降ろしてしまった。よほどやましいことでもあるのかと想像してしまう。
E2系は長野新幹線で乗った時にその蛇行動のひどさにうんざりしたが、10両化の時に改良されたのか、それともアクティブサス装備の先頭車のせいか、乗り心地は良い。仙台から先はあちこち止まりながら盛岡着。盛岡といえばわんこそばだが、駅の普通の立ち食いそばで腹ごしらえをする。そして帰りの切符を確保、盛岡を16時39分に出るはやて22号で、今度はE席を取れた。駅前広場には展示用の馬コが二頭、子供たちの踊りも披露される。
盛岡駅前の通過予定時間は12時40分、カーブの所を外側から写せるポイントを確保したが、反対車線は交通規制をしないことがわかり、あわてて移動する。やがて先導の車がやってくる。「今年も好天に恵まれ、、、」確かに天気が良くなり、暑い。帽子を持ってくれば良かった。十数頭の役員馬に続き本体登場。見事な装飾だ。そしてこの迫力。今年は97頭と聞いた。馬に乗るのは子供（男女関わらず）の役目だが、どう見ても子供には見えない外国人女性が二三見える。
馬列の移動につれてこちらも移動する。途中の歩道橋でも良い写真が撮れる。子馬にもちゃんと飾りを付けているのが面白い。
馬列は開運橋を渡り大通りに向かう。大通りといっても商店街の中で道幅は狭く、車がいないので馬に付けられた鈴と鐘の音が良く聞こえる。この音こそが「チャグチャグ」である。
馬列は中の橋の手前で二手に分かれ、前は八幡宮へ向かうが後の一隊は橋の手前から中津川（北上側の支流）の河原に降りる。ここで馬も人も休息。それにしても日差しが強い。こちらはアイスクリームを食べに行く。
休息後は、馬の飾りをはずし、馬人それぞれが車で滝沢村に帰ることになる。以前は滝沢村まで歩いて帰っていたそうだ。
結局一日馬を追いかけ、盛岡市内は他はどこも行かなかった。多少時間があったため、帰り道の盛岡城址だけは登る。石垣だけである。盛岡市内を走るタクシーに「プリウス」（初代）を使っている会社がある。一日の走行距離の長いタクシーにハイブリッド車を使うと、排気ガスの面からも効果があるはずだ。地方都市のタクシーは昔から小型車が多いので、プリウスの大きさにもさほど抵抗がないのだろうが、ずっとクラウンクラスを使ってきた東京では難しいだろう。
帰りの「はやて」（7号車、E225-1107）ではゆっくり景色を眺めようと思っていたが、半日日差しの中を歩き回っていたため、睡魔には勝てなかった。
２００５年４月
会社から勤続２０年のご褒美として、５万円の旅行券が来た。ところが５月中旬に来たその旅行券を、税務処理場の都合で１０月中に使 え、と言ってきた。旅行に使わないと所得と見なされて課税対象になるらしいが、５月の連休が終わったあとに配って、紅葉の季節前に
使えと言うのは、夏に旅行する若い人ならともかく、永年勤続の表彰を受ける世代にはちょっと酷な話だ。ただで旅行券をもらっておいて文句言うと、罰が当たるが。ともかく時期的にカミさんは旅行はパスで、当方一人で行きたいところへという話になり、以前から行きたかった門司の鉄道記念館に行くことにした。そして旅行券を使うため、JTBでしっかり全行程の切符をそろえた。北九州周遊券を使い、今回は飛行機嫌いのカミさんはいないのにまた行きが新幹線帰りが飛行機の、いつものパターンになってしまった。
ところが旅行直前、目の具合が悪くなった。尋常ではない赤さで、しかも痛い。眼科に行き目薬を差していたが、治る気配がない。いろいろ考えた末、出発時刻を送らせて出発日は小倉までの移動だけにし、朝から眼科に行ってそれから出発することにした。
２００５年１０月７日（金）
旅行の支度で眼科に行く。ところが何と炎症が右目全体に広がっており、ぶどう膜炎と診断された。普通はそれまでに差していた殺菌剤と抗炎症剤で止まるところが止めきらず、右目全体に広がったらしい。本来はすぐ大きな病院に行った方がよいのだが、今から行っても診察時間には間に合わず、また明日から眼科学会というのでどこも開いていない。それで連休明けの１１日に電車で４つめのS大学病院に行くことになった。血液検査から始めてどういう手を打つか決めるそうだが、目薬、眼球に直接注射、点滴、などい
ろいろあるそうで、場合によっては即入院もありとのことであった。
眼科を出たあとまた迷ったが、結局旅行には行くことにした。抗菌剤、ステロイド剤、それに瞳孔を開かせる目薬の３つを差すので目はまぶしく、そのため室内でもかけられる薄めのサングラスを出がけに調達した。
のぞみ19号、新横浜発13時9分、病院に行くためのここまで遅らせたが、これでも小倉に17時30分に着く。目当ての500系は700系になってしまったが、これは仕方がない。車両は725-328、５号車3D。窓側ではないが、編成の前の方の車両なので、ラッキーである。700系はトンネルに入ったときに蛇行動が起きるが、これは編成の後ほど激しい。天気は曇りであったが、豊橋からは雨になる。瞳孔が開いているので、天気が悪いのは有り難い。野洲基地で583系がチラと見える。広島までは立っている人がいる混み方であった。
定刻小倉着。小倉は1984年に車で通過して以来だが、駅となるともう５年近く遡るかもしれない。25年のブランクは大きく、全く変わってしまっている。10年一昔が２巡半しているのだから、仕方がない。まず目当ての北九州モノレールに乗る。開業は1985年だから、東京に転居したあとだ。車両はモノレールらしからぬフラットな床面にロングシート、それに両開きドアと、まさに通勤電車である。終点の企救丘まで一往復する。ワンマン運転で、左手ワンハンドル付きATM。押しボタンで自動運転する。企救丘はその先の車庫まで線路は延びているが、もう暗くなっており写真も撮れない。ホテルは小倉駅の一つ手前の平和通りの方が近い。雨もぱらつきだしたので、ホテルの並びの店で夕食。
小倉泊。
１０月８日（土）
今回の旅行の目的のもう一つは、北九州にある五重塔/三重塔を訪ねることである。九州には古い五重塔はなく、あるのは三重塔が四つでしかも一つは新しいため、実質三つである。その一つが行橋の近くの豊前国分寺、住所は京都郡（みやこぐん）豊津町になる。北九州周遊券のため、遠慮無く特急に乗る。ソニック５号はモハ883-103、そういえば883系に乗るのも初めてだ。行橋も懐かしい。かつては仕事で何回か来た。駅前にC11の動輪が展示してある。かつて行橋には、ラストナンバーの一つ前、C11380がいた。豊前国分寺までの交通機関はかつ
ての田川線、現在の平成筑豊鉄道もあるが、雨も降っているのでタクシーを使う。三重塔はなかなかきれいだ。土曜日だが、他に参拝客はいない。
帰りもタクシーを呼んでもらい、行橋から小倉へ戻る。今度はにちりんで485系、九州独特の派手な塗装だ。小倉から門司港まではロングシートに改造されたクハ411-119、途中東小倉にワキ8000とレサ10000が見えた。保存車だろうか、良く残っていたものだ。
門司港も久しぶりだ。まず昼食を先にする。目薬が５時間おきだが、差すときは３種類を５分間隔を開けて差さなければならず、目薬を差す場所をまず決め、所定の時刻にそこにいるように移動している。昔あった海の見える喫茶店は健在かどうか見てみようと思ったが、どうも様子がおかしい。海岸に出てみてわかった。埋め立てられて、海岸線がずいぶん下がっている。これでは駅前の喫茶店は海に面さない。
さてお目当ての九州鉄道記念館、管理者が変わって国鉄OBがいなくなり心配されていたが、まだ大丈夫であった。96にC59。EF10、ED72、クハ481にクハネ581。キハ07にセラまでいた。欲を言えばセミクロス化改造されているクハネ581は、車内も寝台に復元して欲しかった。C591のナンバープレートを熊本の緑色にしてくれと言ったら、門司のファンから文句が出るだろうか。展示室にはヘッドマークが展示してあったが、ブルートレインがどんどん廃止されている今、九州独特の球面のヘッドマークは貴重品になるだろう。電車よりも気動車が多い「でんしゃのいろえんぴつ」を買う。
これから博多まで篠栗線経由で行くつもりだが、
時間があるので黒崎に立ち寄る。途中見かけた新日鐵のくろがね線は、単線化されていた。かつては複線をひっきりなしにEL牽引DL後補機の列車が走っていたものだが。黒崎について、また驚いた。駅がすっかり変わり、駅前にペデストリアンデッキができた上に、井筒屋がそごうの跡地に引っ越している。線路をまたぐ跨線橋ができたので駅の裏側に行ってみると、安川電機の土地が削られ、道路を造る工事に真っ最中、20年も見ないと変わるはずだ。
せっかくここまで来たので、筑豊電鉄に乗ってみる。黒崎車庫が移転し、駅の上にビルができて、こちらもすっかり様変わり。しかし駅ビルのテナントはすべて閉鎖され、真新しいのに廃墟ビルになってしまっている。北九州は、不況の度合いが強いのか。永犬丸（えいのまる）で降り、1973年の新婚時代に住んだ、家賃9800円のアパートのあったところへ。ところがあったところではなく、ちゃんとそのアパートがあった。すでに人が住んでいる気配はなく取り壊し前のようだが、まだ健在なのには驚いた。亡霊にあったような気分である。
黒崎から直方まで、電化された筑豊線を817系で行く。黒崎−中間間の短絡線に折尾駅ができ、そのまま複線で中間に向かう。かつての路線別から方向別に入れ替わっていた立体交差のあるダイナミックな複々線は、残骸を残すだけである。JR東日本やJR西日本の電車は発車合図を行わず、ドア閉信号のみでそのまま発車しているが、私鉄はちゃんとドア閉後安全確認を行って発車合図
をしている。JR九州はどうかと思ったが、ちゃんと安全確認後発車合図をしていた。直方からも817系で博多へ。「福岡ソフトバンクホークス優勝応援イベント」のポスターの貼られた博多井筒屋の前を通り、ビジネスホテルへ。
博多泊。
１０月９日（日）
今日はもう一つの三重の塔のある清水寺を目指し、瀬高へ向かう。残る一つは、臼杵だから、また機会があるときだ。博多から「リレーつばめ」３７号で行く。787系のつばめは九州新幹線の開通で運転区間が短縮され、全国でただ一つだったビュッフェ車が無くなり、魅力が少し減った。しかし九州の看板列車の誇りは健在で、車内での日英中韓、４カ国語のアナウンスにもそれが現れている。
瀬高に降り立ったが、バス停らしきものは何もない。このあたり、人の流れは西鉄沿線が主体なので、JRで来たのがまずかったのかもしれない。仕方なしにタクシーに乗る。何となく話が弾み、帰りはまた来てもらうことにして、携帯の番号を教えてもらう。三重の塔は昭和４１年に修復されたためか、ずいぶん新しげに見える。ここは山門が見事だ。
タクシーを使ったので待ち時間が減り、ずいぶん早く終わった。そのため「時間があれば」と思っていた諸富の可動橋へ行くことにする。タクシーの運転手さんにバス停の場所を聞いているうち、「このまま行こう」ということになり、タクシーで直行する。タクシーなのでそのまま河岸の可動橋が良く見えるポイントまで連れて行ってもらう。これでまた一つ念願が叶ったが、佐賀線が廃止される前に来たかった！
タクシーで柳川まで行ってもらい、降りる。途中で家具の名所大川を通ったが、家具も不況とのこと。大川は「のだめカンタービレ」の「のだめ」の出身地だが、そのうち東京からツアーが来るかもしれない。国鉄柳川駅跡は、公園になっていた。
柳川はちょうど「おにざえ」と言われるお祭りの真っ最中。きれいどころが乗った山車が町に
繰り出している。船には乗らず、お昼（鰻！）を食べ川の周りを散歩するだけにする。歩いただけでも、結構面白い。
時間が余り、せっかくここまで来たので、西鉄で大牟田に向かう。柳川のあたりはちょうど単線になっていたところだが、現在もそのままだ。西鉄8000系を楽しむ。
大牟田から787系の「有明」１８号で博多へ向かうが、少々くたびれて他を回る元気もなくなり、また街中で時間をつぶすのももったいないので、小倉行きを良いことにそのまま折尾まで乗る。こういうときに周遊券は便利だ。JR九州では特急もやはり車掌が発車合図を行って発車していた。折尾に来たのは、昨日確認しそびれた折尾駅の筑豊線側のホームがどうなっているのか、確認するためでもある。直方側は単線、若松側は複線で、対向２面のホームの片側だけ架線が引いてあった。若松側ももう貨物列車は走っていないだろうから、どこまで複線が続いているかはわからない。
「白いソニック」885系で博多に戻り、１本早い飛行機で東京に帰ることにする。羽田空港着は17:45、この時はこれから３週間の入院生活とその後の行動制限など知るよしもなく、まさにつかの間の楽しみであった。